著者:K(都内総合大学・アドミッションセンター職員)
はじめに
このブログでは、大学職員の現場目線で AIを使った業務効率化の具体的手法 を紹介します。本記事は 2025年9月時点の情報 に基づき、現在「3大LLM(大規模言語モデル)」と呼ばれる代表的なAIの特徴と、業務での使い分けについて分かりやすく解説します。
「ChatGPT以外にも色々あるけど、何が違うの?」「結局どれを使えばいいの?」といった疑問をお持ちの方は、ぜひご一読ください。
そもそもLLM(大規模言語モデル)とは?
LLMとは、膨大な量のテキストデータを学習し、人間のように言葉を操るAIのことです。文章の作成、要約、翻訳、アイデア出しなど、私たちの業務における「書く」「考える」作業を幅広くサポートしてくれます。
現在、特に性能が高く、世界中で利用されている代表的なLLMが以下の3つです。それぞれの特徴を見ていきましょう。
3大LLMの特徴を徹底比較
それぞれのLLMには得意なこと、苦手なことがあります。例えるなら、それぞれ性格の違う優秀なアシスタントのようなものです。
1. GPTシリーズ (OpenAI社)
言わずと知れた「ChatGPT」を動かしているLLMです。最新モデル(GPT-5世代)は、あらゆるタスクを高いレベルでこなす総合力の高さが最大の特徴です。
得意なこと:
- 汎用性: メール作成、企画書の壁打ち、文章の要約・校正、データ分析、プログラミング補助など、どんな用途でも安定した性能を発揮します。
- エコシステム: 最も普及しているため、連携できる外部サービスやツールが豊富です。情報も多く、困ったときに調べやすいのも利点です。
- 自然な対話: ユーザーの意図を汲み取り、自然で分かりやすい文章を生成する能力に長けています。
どんな業務・人におすすめ?:
- 初めてLLMを使う人
- 特定の用途に絞らず、幅広くAIアシスタントとして活用したい人
- 定型的なメール作成や資料の骨子作成を効率化したい場合
2. Geminiシリーズ (Google社)
Googleが開発するLLMで、Google検索と連携した最新情報の取得と、膨大な情報の処理能力に強みを持ちます。
得意なこと:
- リアルタイム性: 最新のニュースやウェブ上の情報を反映した回答を生成できます。「最新の〇〇の動向を教えて」といった指示に強いです。
- 長文・大量データの読解: 一度に処理できる情報量(コンテキストウィンドウ)が非常に大きく、分厚いPDF資料や長時間の会議録、大量のアンケート結果などを丸ごと読み込ませて分析・要約させることが可能です。
- マルチモーダル: テキストだけでなく、画像や音声、動画の内容を統合的に理解する能力が非常に高いです。
どんな業務・人におすすめ?:
- 最新のトレンドや他大学の事例を調査したい人
- 論文や報告書、アンケートの自由記述など、大量の資料を分析・要約したい場合
- Google Workspace(ドキュメント、スプレッドシート等)との連携を重視する人
3. Claudeシリーズ (Anthropic社)
「AIの安全性」を重視して開発されたLLMです。丁寧で倫理的な出力を心がけるよう設計されており、特に自然な文章生成と高度なコード生成能力に定評があります。
得意なこと:
- 安全性と倫理観: 暴力的・差別的な表現を避け、より慎重で配慮のある回答を生成する傾向があります。企業の公式文書作成など、コンプライアンスが重視される場面で力を発揮します。
- 自然な文章作成と高度なコード生成: 人間が書いたような温かみのある文章だけでなく、複雑な要件に基づいたコード生成やデバッグも得意とします。
- 長文読解と誠実な応答: Gemini同様、長文読解能力に優れています。また、分からないことに対しては正直に「分かりません」と答える誠実さも特徴です。
どんな業務・人におすすめ?:
- 学内外向けの公式な文章や、丁寧さが求められる文書を作成したい人
- 企画のアイデア出しや思考の壁打ち相手として、より人間らしい対話をしたい場合
- 契約書の読解やプログラミング補助など、正確性と安全性が求められる作業
ケーススタディ(大学業務での使い分け)
事例A:オープンキャンパスの企画立案
創造的なアイデア出しは Claude と壁打ち。企画の整理やタスクリストの整理はGeminiを使用し、スプレッドシートと連携。最新の他大学の動向調査や、参考資料の分析には Gemini を活用。
事例B:大量の学生アンケート結果の分析
自由記述欄を含むExcelデータを丸ごと Gemini に読み込ませ、「学生が感じている不満点を5つに要約して」と指示し、報告書の要点を作成。
事例C:説明会のスピーチ原稿作成
伝えたい要点を箇条書きにし、「丁寧で温かみのある語り口で」と Claude に依頼。ベースとなる質の高い原稿を短時間で作成し、自分は最後の手直しをするだけ。
LLM利用時の注意点
- 情報の正確性(ハルシネーション): AIは事実に基づかない誤った情報を生成することがあります。固有名詞や数値、専門的な内容については、必ずファクトチェック(事実確認)を行いましょう。
一昔前に比べるとかなり精度は上がっています!
- データの取り扱い: 個人情報や機密情報、未公開の研究データなどを絶対に入力しないこと。外部への情報送信については、所属機関の規定を必ず確認してください。
- 得意・不得意の理解: 万能なAIは存在しません。それぞれのツールの特性を理解し、「適材適所」で使い分けることが業務改善の鍵です。
まとめ
3大LLMは、どれが一番優れているというわけではなく、それぞれに個性と得意分野があります。業務の目的や状況に応じて最適なツールを使い分けることで、作業効率は飛躍的に向上します。
以下に、それぞれの特徴を比較表にまとめました。(⚪︎:得意, △:普通, ×:苦手)
※私、個人の使用感も含む
評価項目 | GPTシリーズ (OpenAI) | Geminiシリーズ (Google) | Claudeシリーズ (Anthropic) |
---|---|---|---|
汎用性(幅広い業務) | ⚪︎ | ⚪︎ | △ |
最新情報の反映 | △ | ⚪︎ | × |
長文・大量データの読解 | △ | ⚪︎ | ⚪︎ |
コード生成能力 | ⚪︎ | △ | ⚪︎ |
安全性・倫理観 | △ | △ | ⚪︎ |
自然で創造的な文章 | ⚪︎ | △ | ⚪︎ |
マルチモーダル(画像等) | ⚪︎ | ⚪︎ | △ |
まずは無料で利用できる範囲でそれぞれのAIに触れてみて、その応答の違いを体感してみるのがおすすめです。この記事が、あなたの業務に合ったAIアシスタントを見つけるための一助となれば幸いです。
コメント