【カンニング対策】スマートグラスによる入試不正を振り返る|大学職員が事例と対策を解説

試験会場で注意したいスマートグラス型デバイスのイメージ
目次

この記事でわかること

✅ スマートグラスを使った入試不正の事例と、なぜ不正が発覚したのか
✅ 最新のスマートグラスがどこまで「普通のメガネ」に近づいているか
✅ 試験監督の現場で確認したいチェックポイント
✅ 入試に向けて大学として今から準備できること

はじめに|「メガネ型デバイスによる入試不正」は他人事ではない

2026年7月現在、多くの大学では秋から始まる総合型選抜や、その後に続く学校推薦型選抜、一般選抜に向けた準備が進んでいる時期ではないでしょうか。

入試要項の確認、試験会場の準備、監督者への説明、持ち込み禁止物の整理など、今のうちに見直しておきたい項目は少なくありません。

その中で、近年特に注意が必要なのが、AI機能やカメラ、音声機能などを搭載したスマートグラスです。

通常のメガネと同じような見た目のものも増えており、最新のスマートグラスが入試や資格試験のカンニングに悪用されるリスクも非常に高くなっています。

実際に国内の大学入試では、スマートグラスを使って試験問題を撮影し、外部に送信した不正事例などが発生しています。この事例がなぜ発覚したのかを確認すると、機器を完全に見分けることだけでなく、試験中の違和感を見逃さず、複数の職員で確認する体制が重要だと分かります。

この記事では、これまでに起きた主な事例を振り返りながら、スマートグラスによる不正がなぜ発覚したのか、試験監督の現場で何を確認すべきか、入試開始前に大学としてどのような準備を進められるかを整理します。

本記事は、スマートグラスを使ったカンニング方法や不正の手順を紹介するものではありません。大学職員・試験監督者が最新の不正事例と機器の特徴を把握し、秋以降の入試に向けて試験運営やカンニング対策を見直すことを目的としています。

そもそもスマートグラスとは?

スマートグラスとは、メガネ型のウェアラブル端末の総称です。外見はほぼ普通のメガネですが、内部にカメラ・マイク・スピーカー・ディスプレイなどが搭載されているものがあり、スマートフォンと連携してさまざまな機能が使えます。

主な機能には以下のようなものがあります。

  • カメラ機能:目線の先を撮影し、画像や動画を記録できる
  • ディスプレイ機能:レンズに情報を表示できる機種がある
  • 音声機能:スピーカーやマイクを通じて音声操作や通話ができる機種がある

ビジネスや日常生活での活用が進む一方、こうした機能が試験会場での不正利用につながる可能性があることが問題視されています。

これまでの主な不正事例

① 大学入試のスマートグラス不正はなぜ発覚したのか(2024年)

2024年2月、国内の私立大学の一般選抜で、受験生がカメラ付きのスマートグラスを使って試験問題を撮影し、SNSを通じて外部の人物に送信して、解答を求める不正行為が発生しました。

その後、同じ受験生が別日程の試験を受けに来た際、眼鏡に小型カメラが付いていることを大学職員が目視で確認し、警察に通報したと報じられています。

受験生は偽計業務妨害の疑いで書類送検され、その後、家庭裁判所に送致されたとされています。

本人は、大学入学共通テストの結果が思うようにいかず、他大学の入試にも不安を感じたことが、不正を思い付いた背景にあったという趣旨の説明をしたと報じられています。

この事例から学べること:

  • スマートグラスは通常の眼鏡に近い外見をしており、短時間の目視だけでは判断が難しい
  • 同じ受験生が、別日程の試験でも同じ機器を着用する可能性がある
  • 発覚のきっかけは、大学職員が眼鏡の異変に気づき、確認・通報につなげたことだった
  • 入室時の確認だけでなく、試験中の挙動や複数日程を通じた情報共有も重要になる

② TOEICで発覚したスマートグラスなどを使った組織的不正(2025年)

2025年には、国内のTOEIC試験で、カメラ付きスマートグラスなどを使った組織的な不正が発覚しました。

報道によると、主な容疑者は、カメラ付きスマートグラスで試験問題を確認し、マスク内に隠した小型マイクを使って、周囲の受験者に答えを伝えていたとされています。また、別の受験者からは、耳の中に入れる小型の骨伝導イヤホンや、スマートフォンと接続する中継装置なども見つかりました。

試験実施団体は調査の結果、同じ住所や類似する住所を登録していた多数の受験者について、スコアを無効とする措置を取ったと報じられています。

大学入試とは異なる試験ですが、スマートグラス、小型マイク、イヤホン、中継装置など、複数の機器を組み合わせた不正が組織的に行われる可能性があることを示す事例です。

大学入試の現場でも、眼鏡型端末だけを見るのではなく、イヤホン、マスク、ペンダント型機器、スマートフォンなどを組み合わせた不正を想定して、持ち込み物や監督方法を見直す必要があります。

最新スマートグラスの現状|見分けるのは年々難しくなっている

近年のスマートグラスは、重量・デザインともに通常のメガネと区別がつきにくいレベルまで進化しています。製品によっては、以下のような特徴を備えています。

  • 重量30〜40g台の軽量なモデルもある
  • 度付きレンズに対応したモデルもある
  • レンズや視界内に情報を表示できるモデルもある
  • カメラを搭載せず、音声機能や情報表示を中心としたモデルもある

特に注意が必要なのは、カメラが搭載されていなくても、レンズへの情報表示機能があれば試験会場で不正利用されるリスクがあるという点です。「カメラがなければ安心」とは言えない状況になっています。

スマートグラスはオンラインショップや家電量販店などでも購入できるようになっており、以前より一般の利用者が入手しやすい製品になっています。

こうした機器の進化を踏まえると、製品名やカメラの有無だけで判断するのではなく、試験会場でどのような点を確認するかを事前に整理しておくことが重要です。

試験監督として現場で確認したいポイント

スマートグラスは見た目が普通のメガネに近いため、完全に見分けることは難しいのが現状です。しかし、以下のポイントを意識することで、異変に気付ける可能性を高めることができます。

入室前のチェック

  • フレームの太さ・厚み:スマートグラスはフレームのつる(テンプル)部分にバッテリーや処理装置が内蔵されているため、通常のメガネより太め・厚めに見える場合がある
  • レンズの反射・色味:ディスプレイ内蔵型は、角度によってレンズに独特の反射が生じる場合がある
  • フレームの形状の不自然さ:カメラ搭載型はレンズ上部やフレーム端に小さな突起や穴がある場合がある

試験中の様子

  • 視線の動きが不自然ではないか:問題用紙ではなくレンズ内の情報を追っているように見える場合がある
  • 頭の動きが不自然に固定されていないか:視線や姿勢が極端に固定される場合は注意が必要
  • 操作が疑われる不自然な手の動きがないか:別の小型デバイスと組み合わせて操作するケースも想定される

事前の周知・抑止として

  • 受験票や会場掲示物に「スマートグラスを含む電子機器の持ち込み禁止」を明記する
  • 試験監督員への研修で、スマートグラスの外見的特徴を共有しておく
  • 疑わしい場合は一人で判断せず、複数名で対応することを徹底する

試験監督者が確認したいスマートグラス対策チェックリスト

入試実施に向けて、試験監督者・入試担当部署で確認しておきたいポイントを整理します。

  • 受験案内に、スマートグラスなどのウェアラブル端末の持ち込み可否を明記する
  • 試験室入室前に、眼鏡型デバイス・イヤホン・スマートウォッチ等の扱いを確認する
  • 通常の眼鏡との違いを見分けるため、監督者向けの事前共有を行う
  • 不審な挙動があった場合の対応手順を、試験本部と監督者で共有しておく
  • 合理的配慮が必要な受験生への対応と、不正対策を混同しないよう注意する
  • 疑わしい場合は、監督者個人で判断せず、複数名で確認・記録・報告する

今後の入試に向けて、今から考えておきたいこと

総合型選抜の開始が近づく今、試験実施前に不正対策を見直せる重要な時期です。実際に入試が始まってから対応を考えるのではなく、規程、監督者研修、当日の対応手順を事前に確認しておく必要があります。

① 試験実施規程の見直し

「電子機器の持ち込み禁止」という記載だけでは不十分になりつつあります。「スマートグラスを含むウェアラブル端末」を明示的に禁止対象として盛り込むことを検討しましょう。

② 試験監督員の研修内容のアップデート

毎年度の監督員研修に、スマートグラスなどの最新不正機器に関する情報を盛り込むことが有効です。実際の機器の写真や外見的特徴を共有しておくことで、監督者がスマートグラスの存在や特徴を事前に知る機会になります。

③ 複数名対応のルール化

不審な受験生への声がけや退出要請は、トラブル防止の観点からも複数名体制で行うことが重要です。監督員一人が判断・対応する体制は見直しましょう。

④ 長期的な視点:試験方式の検討

より長期的には、「何を測る試験なのか」という根本的な議論も必要になってくるかもしれません。AIやスマートデバイスを前提にした評価方法へのシフトを議論し始めている大学もあります。すぐに変えられるものではありませんが、こうした視点について、大学として議論を始めておくことも重要です。

まとめ

スマートグラスを使った不正行為は、すでに現実の問題として大学の現場に迫ってきています。

  • 国内でも書類送検に至った事例があり、発見の鍵は現場の職員の目視だった
  • 最新のスマートグラスは度付き対応・軽量化が進み、普通のメガネとほぼ区別がつかないレベルまで進化している
  • カメラ非搭載モデルでも不正に利用されるリスクがあり、「カメラがなければOK」とは言えない
  • 海外ではすでに試験への持ち込みを明示禁止する動きが進んでいる

「昨年度は何もなかったから大丈夫」という油断は禁物です。総合型選抜が始まる前の今だからこそ、規程・監督者研修・当日の対応手順の三つの側面から、2026年秋以降の入試に向けた準備を進めておきましょう。準備を進めていきましょう。

この記事が少しでも皆さんの現場対応の参考になれば幸いです。

※ 本記事の情報は2026年7月時点のものです。製品情報や試験上の取扱いについては、各機関の公式情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

20代後半・二児の父。文系の4年生大学を卒業後、民間企業を経て、都内の総合大学で事務職員として勤務中。AIを使用した業務効率化や実生活での活用について発信。事務職員(非エンジニア)目線で誰にでも再現できる活用法の発信を心がけていきます。

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