【カンニング対策】スマートグラスによる入試不正を振り返る|大学職員が事例と対策を解説

試験会場で注意したいスマートグラス型デバイスのイメージ
目次

この記事でわかること

✅ これまでに実際に起きたスマートグラスを使った入試不正の事例
✅ 最新のスマートグラスがどこまで「普通のメガネ」に近づいているか
✅ 試験監督の現場で確認したいチェックポイント
✅ 来年度の入試に向けて大学として今から準備できること

はじめに|「メガネ型デバイスによる入試不正」は他人事ではない

2026年度入試が終わり、ひと段落した4月。私も入試業務を終えてほっとしているところです。

しかし、今年度の入試を振り返ったとき、もしかしたら…?といった場面はありませんでしたか?

スマートグラスを使った不正行為は、もはや「未来の話」「海外の話」ではありません。日本国内の有名大学でも実際に発生し、書類送検にまで至っています。すでに普通のメガネとほぼ見分けのつかないモデルが、国内の家電量販店でも販売開始されています。

本記事は、スマートグラスなどのウェアラブル端末を使った入試不正を助長する目的ではなく、大学職員・試験監督者がリスクを理解し、不正防止や試験運営の見直しに役立てることを目的としています。

この記事では、これまでに起きた主な事例の整理と、現場の試験監督として知っておきたい最新情報をまとめています。「来年度に向けて何か対策を」とお考えの大学職員の方にもぜひ読んでいただきたい内容です。

※ 本記事の情報は2026年4月時点のものです。最新の状況は各機関の公式情報をご確認ください。

そもそもスマートグラスとは?

スマートグラスとは、メガネ型のウェアラブル端末の総称です。外見はほぼ普通のメガネですが、内部にカメラ・マイク・スピーカー・ディスプレイなどが搭載されているものがあり、スマートフォンと連携してさまざまな機能が使えます。

主な機能には以下のようなものがあります。

  • カメラ機能:目線の先を撮影し、画像や動画を記録できる
  • ディスプレイ機能:レンズに情報を表示できる機種がある
  • 音声機能:スピーカーやマイクを通じて音声操作や通話ができる機種がある

ビジネスや日常生活での活用が進む一方、こうした機能が試験会場での不正利用につながる可能性があることが問題視されています。

注意

本記事では、スマートグラスの悪用方法を具体的に解説することを目的としていません。大学職員・試験監督者が、不正利用のリスクを把握し、試験運営上の確認ポイントを整理するために一般的な注意点を紹介しています。

これまでの主な不正事例

① 有名私立大学入試でのスマートグラス不正事例(2024年)

2024年2月、国内の有名私立大学の一般入試において、受験生がスマートグラスを使って試験問題を撮影し、スマートフォンを経由してSNS上に画像を送信。外部の複数人に解答を求めるという不正行為が発覚しました。

後日、別日程の試験を受けに来た同じ受験生の眼鏡に小型カメラが付いていることを大学職員が目視で発見し、警察に通報。偽計業務妨害の疑いで書類送検され、その後家庭裁判所に送致されています。

受験生は「共通テストの結果が悪く、志望の国立大学に落ちた。他の大学にも落ちる不安から不正を思い付いた」と供述したとされています。

この事例から学べること:

  • スマートグラスは「普通のメガネに見える」ため、入室時の目視チェックだけでは発見が難しい
  • 試験中だけでなく、複数日にわたって使い続けるケースもある
  • 職員が「眼鏡の異変」に気付いて通報したことが解決の糸口になった

② 資格試験での組織的不正事例(骨伝導スマートグラスの使用)(2025年)

2025年には、国内の資格試験会場で骨伝導スマートグラスと小型イヤホンを組み合わせた組織的な不正が発覚しています。外国語のSNS上では試験対策と称した不正サービスの広告が出回っており、数万円で受験のサポートを請け負う「カンニングビジネス」が存在することも明らかになりました。

大学入試とは異なる試験環境でしたが、こうした不正が組織化・商業化している事実は、大学入試の現場においても決して他人事ではありません。

最新スマートグラスの現状|見分けるのは年々難しくなっている

「普通のメガネ」との差がなくなってきた

近年のスマートグラスは、重量・デザインともに通常のメガネと区別がつきにくいレベルまで進化しています。具体的には以下のような特徴が一般的になってきました。

  • 重量30〜40g台:通常のメガネとほぼ変わらない軽さのモデルがある
  • 度付きレンズへの対応:近視・遠視・乱視の処方箋に対応したモデルが増加
  • ディスプレイ搭載:レンズ部分に情報を表示できる機種が登場
  • カメラ非搭載モデルも存在:撮影機能がなくても、外部から情報を受信・表示できる機種がある

特に注意が必要なのは、カメラが搭載されていなくても、レンズへの情報表示機能があれば試験会場で不正利用されるリスクがあるという点です。「カメラがなければ安心」とは言えない状況になっています。

また、2026年春からは国内の大手家電量販店でも複数のモデルが販売開始されており、入手のハードルは以前より大幅に下がっています。

海外でも規制が進んでいる

アメリカの大学進学適性試験SATを運営する機関は、2026年春からスマートグラスの使用を試験会場で明示的に禁止しました。処方箋対応の度付きスマートグラスを使用している受験生には、通常の眼鏡への変更か別日程での受験を求めています。

このような海外の動向からも、スマートグラスが試験会場において明確なリスクとして認識されつつあることがわかります。

試験監督として現場で確認したいポイント

スマートグラスは見た目が普通のメガネに近いため、完全に見分けることは難しいのが現状です。しかし、以下のポイントを意識することで、異変に気付ける可能性を高めることができます。

入室前のチェック

  • フレームの太さ・厚み:スマートグラスはフレームのつる(テンプル)部分にバッテリーや処理装置が内蔵されているため、通常のメガネより太め・厚めに見える場合がある
  • レンズの反射・色味:ディスプレイ内蔵型は、角度によってレンズに独特の反射が生じる場合がある
  • フレームの形状の不自然さ:カメラ搭載型はレンズ上部やフレーム端に小さな突起や穴がある場合がある

試験中の様子

  • 視線の動きが不自然ではないか:問題用紙ではなくレンズ内の情報を追っているように見える場合がある
  • 頭の動きが不自然に固定されていないか:視線や姿勢が極端に固定される場合は注意が必要
  • 操作が疑われる不自然な手の動きがないか:別の小型デバイスと組み合わせて操作するケースも想定される

事前の周知・抑止として

  • 受験票や会場掲示物に「スマートグラスを含む電子機器の持ち込み禁止」を明記する
  • 試験監督員への研修で、スマートグラスの外見的特徴を共有しておく
  • 疑わしい場合は一人で判断せず、複数名で対応することを徹底する

試験監督者が確認したいスマートグラス対策チェックリスト

来年度の入試に向けて、試験監督者・入試担当部署で確認しておきたいポイントを整理します。

  • 受験案内に、スマートグラスなどのウェアラブル端末の持ち込み可否を明記する
  • 試験室入室前に、眼鏡型デバイス・イヤホン・スマートウォッチ等の扱いを確認する
  • 通常の眼鏡との違いを見分けるため、監督者向けの事前共有を行う
  • 不審な挙動があった場合の対応手順を、試験本部と監督者で共有しておく
  • 合理的配慮が必要な受験生への対応と、不正対策を混同しないよう注意する
  • 疑わしい場合は、監督者個人で判断せず、複数名で確認・記録・報告する

来年度に向けて、今から考えておきたいこと

入試シーズンが終わった今こそ、対策を見直す絶好のタイミングです。現時点で大学として検討しておきたいことを整理します。

① 試験実施規程の見直し

「電子機器の持ち込み禁止」という記載だけでは不十分になりつつあります。「スマートグラスを含むウェアラブル端末」を明示的に禁止対象として盛り込むことを検討しましょう。

② 試験監督員の研修内容のアップデート

毎年度の監督員研修に、スマートグラスなどの最新不正機器に関する情報を盛り込むことが有効です。実際の機器の写真や外見的特徴を共有するだけでも、現場での発見率が上がる可能性があります。

③ 複数名対応のルール化

不審な受験生への声がけや退出要請は、トラブル防止の観点からも複数名体制で行うことが重要です。監督員一人が判断・対応する体制は見直しましょう。

④ 長期的な視点:試験方式の検討

より長期的には、「何を測る試験なのか」という根本的な議論も必要になってくるかもしれません。AIやスマートデバイスを前提にした評価方法へのシフトを議論し始めている大学もあります。すぐに変えられるものではありませんが、こうした視点を持っておくことも職員として重要です。

まとめ

スマートグラスを使った不正行為は、すでに現実の問題として大学の現場に迫ってきています。

  • 国内でも書類送検に至った事例があり、発見の鍵は現場の職員の目視だった
  • 最新のスマートグラスは度付き対応・軽量化が進み、普通のメガネとほぼ区別がつかないレベルまで進化している
  • カメラ非搭載モデルでも不正に利用されるリスクがあり、「カメラがなければOK」とは言えない
  • 海外ではすでに試験への持ち込みを明示禁止する動きが進んでいる

「去年は何もなかったから大丈夫」という油断は禁物です。入試シーズンが終わった今だからこそ、規程・研修・現場対応の三つの側面から来年度の準備を進めていきましょう。

この記事が少しでも皆さんの現場対応の参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人

20代後半・二児の父。文系の4年生大学を卒業後、民間企業を経て、都内の総合大学で事務職員として勤務中。AIを使用した業務効率化や実生活での活用について発信。事務職員(非エンジニア)目線で誰にでも再現できる活用法の発信を心がけていきます。

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