ChatGPTのDeep Researchは、複数のWebページを調べ、出典付きのレポートにまとめられる機能です。ただし、同じ質問を繰り返したときに、毎回同じ資料と結論へ到達するとは限りません。この記事は、4大学のガイドラインを網羅的に比較するものではなく、公開されている公式資料を題材に、Deep Researchの調査結果がどの程度安定するかを確かめた検証記事です。
そこで、公開されている大学の生成AI利用ガイドラインを題材に、同一プロンプトを新しいチャットで3回実行しました。対象大学と比較項目を固定し、主要な事実、出典、「記載なし」の判断がどの程度一致するかを確認しています。
結論からいうと、4大学の基本方針は3回ともほぼ同じ結果になりました。一方、公表日の補い方や、原文に直接書かれていない項目の扱いには差が出ています。比較表のたたき台には使えますが、学生への正式な案内や学内資料に使用する前には、公式原文の確認が必要です。
今回の結論
- 4大学の主要な方針は3回ともほぼ一致した
- 使用した公式資料もおおむね一致した
- 明治大学の公表日は「2023年5月17日」と「不明」に分かれた
- 出力の構成、説明量、引用の位置は毎回異なった
- Deep Researchの結果を正式な案内へ使う場合は、公式資料との照合が必要
| 確認項目 | 3回の結果 |
|---|---|
| 主要な結論 | ほぼ一致 |
| 使用した大学公式資料 | ほぼ一致 |
| 引用箇所 | 趣旨は一致したが、長さや位置は異なった |
| 「記載なし」の判断 | 一部で差があった |
| 公表日の扱い | 1項目で差があった |
| 出力構成・文章量 | 毎回異なった |
Deep Researchを3回試した条件
検証日は2026年9月29日です。東京大学、京都大学、立命館大学、明治大学の4大学を対象にしました。今回は、一般公開された全学・全学生向けの資料を確認できる大学として選んでいます。
比較したのは、次の8項目です。
- 生成AIを一律禁止しているか
- 担当教員・指導教員の指示が優先されるか
- AI利用の明示や利用過程の記録を求めているか
- 出典確認・ファクトチェックを求めているか
- 個人情報・機密情報・未発表研究情報の入力制限
- 著作権・剽窃への注意
- 不正行為となる条件
- 資料の公表日・改定日
3回とも新しいチャットを使用し、対象大学、比較項目、基準日、情報源の条件を変えずに実行しました。検索対象は大学の公式ドメインだけとし、公式資料で確認できない場合は「記載なし」または「不明」とするよう指定しています。
学部・研究科・個別授業だけに適用される資料と、学内認証が必要な資料は対象外です。
3回とも一致した内容
大学全体で一律禁止という整理にはならなかった
4大学とも、生成AIの利用を大学全体で一律禁止するという結論にはなりませんでした。一方で、授業や研究指導ごとの方針に従うことは共通して重視されています。
全学のガイドラインで生成AIの利用が一律禁止されていなくても、すべての授業や課題で自由に使えるという意味ではありません。学生へ案内する場合は、科目や課題ごとの指示も確認する必要があります。
担当教員・指導教員の指示を確認する
担当教員や指導教員の指示を確認するという点は、3回の調査ですべて一致しました。大学全体の方針だけで利用可否を断定せず、授業や研究の目的に応じて判断するという考え方です。
ファクトチェックと情報管理は共通の注意点
4大学とも、生成結果に誤りが含まれる可能性、個人情報・機密情報を入力する危険性、著作権や剽窃への注意を示していました。表現の強さや説明の詳しさには違いがありますが、AIの回答をそのまま採用しないという方向性は共通しています。
大学や職場で生成AIを利用するときの情報管理については、事務職のAIセキュリティ対策とチェックリストでも詳しく整理しています。
利用記録の具体性には違いがあった
京都大学と立命館大学は、生成AIを利用した過程や履歴の保存について比較的具体的に示していました。東京大学は、使用したツール名の記載を求められる場合があるという表現です。明治大学の今回対象とした全学資料では、利用過程の保存に関する明示的な記載を確認できませんでした。
ただし、公開資料に記載がないことは、利用記録が不要であることを意味しません。学部、研究科、授業などで別のルールが定められている可能性があります。
3回で回答が変わったところ
明治大学の公表日が「2023年5月17日」と「不明」に分かれた
最も分かりやすい差は、明治大学の資料の公表日でした。3回のうち2回は「2023年5月17日」、1回は「不明」と回答しています。
明治大学の本文ページでは、取得できる本文上に日付表示を確認できません。一方、大学公式の2023年度ニュース一覧には、同ページが2023年5月17日の情報として掲載されています。
つまり、指定した本文ページだけで判断するか、同じ公式ドメイン内の関連ページまで探して補うかによって回答が変わりました。最終的には「公式ニュース一覧によれば2023年5月17日。本文ページ単独では日付を確認できない」と整理するのが正確です。
「記載なし」の判断にも小さな揺れがあった
「未発表研究情報」という言葉が資料に直接書かれていない場合、機密情報の一種としてまとめる回答と、その項目は個別に「記載なし」とする回答がありました。
Deep Researchが示す「記載なし」には、本当に資料にない場合だけでなく、関連する表現を個別項目へ当てはめなかった場合も含まれます。規程やガイドラインの比較では、結論だけでなく原文の該当箇所まで確認した方が安全です。
文章構成と詳しさは毎回異なった
1回目は調査条件から説明し、2回目は結論を先に提示し、3回目は比較表から始まりました。主要な事実はほぼ同じでも、見出しの順番、説明量、記号の使い方、引用の置き方は一致していません。
同じ情報が得られることと、同じ文章が生成されることは別です。定型的な報告書を作る場合は、必要な見出し、表の列、文字数までプロンプトで固定した方が整えやすくなります。
大学別の生成AI利用方針を公式資料で確認
東京大学
- 全学的な一律禁止ではない
- 授業ごとの利用可否や条件は担当教員が判断する
- AI生成文をそのまま自分の文章として使うことは認めない
- 機密情報、個人情報、未発表の研究成果などは入力しない
確認した資料は2023年5月26日付の「東京大学の学生の皆さんへ:AIツールの授業における利用について(ver.1.0)」です。
京都大学
- 担当教員・指導教員が示す利用方針に従う
- 文章表現の修正の枠を越えて成果物を作成する場合は、作業プロセスの記録を保存する
- 一次資料に基づく厳格なファクトチェックを求める
- 個人情報・機密情報・著作物などの入力に注意する
「京都大学の教育・学修における生成AI利用に関するガイドライン」は、2026年3月11日付で公開されています。
立命館大学
- 授業ごとに生成AIの利用方針を設定する
- 利用の段階、申告、履歴保存などを具体的に示している
- 学術文献等との照合を求めている
- 個人情報、機密情報、未発表研究情報等の入力に注意する
確認した学生向けガイドラインは2026年3月19日付です。立命館大学の案内ページから確認できます。
明治大学
- 生成AIだけで課題レポート等を作成することは認めない
- 担当教員・指導教員の指示を確認する
- 文献等によるファクトチェックを必須としている
- 個人情報・機密情報・第三者の著作物等の入力を避ける
確認したのは「ChatGPTをはじめとする生成系AIの利用について」です。大学公式ニュース一覧では2023年5月17日の情報として掲載されています。
大学事務でDeep Researchを使うなら、どこまで任せられるか
任せやすい作業
- 公開資料の候補を集める
- 決めた比較項目に沿って表の下書きを作る
- 共通点と相違点を洗い出す
- 人が確認すべき箇所を見つける
人が必ず確認したい作業
- 公表日・改定日
- 「記載なし」という判断
- 資料の適用対象が全学か一部部局か
- 確認した資料が最新版か
- 学内限定資料との不一致がないか
- 学生への正式案内に使う表現
大学事務向けの安全な使い方
- 対象と比較項目を先に固定する
- 検索対象を公式ドメインに限定する
- 不明な点を推測しないよう指示する
- 出典URLと該当箇所を出力させる
- 最終表は各大学の原文と照合する
- 個人情報や学内非公開情報を入力しない
ChatGPT、Gemini、Copilotなどを大学業務で使い分ける考え方は、事務職・大学職員のためのAI活用完全ガイドでも紹介しています。
ChatGPT・Gemini・Copilotの比較は別の検証が必要
今回はChatGPT内での再現性を確かめるため、GeminiのDeep ResearchやMicrosoft 365 CopilotのResearcherは混ぜていません。
サービスを変えると、検索方法、利用できる情報源、調査計画、契約条件が異なります。複数サービスを1回ずつ試した場合は、「同じAIで回答が揺れるか」ではなく「サービスによって調査結果がどう変わるか」という別の検証になります。
まとめ
ChatGPTのDeep Researchに同じ条件で3回調査を依頼したところ、4大学の主要な方針はほぼ一致しました。対象と比較項目を固定すれば、複数の公開資料を整理して比較表の下書きを作る用途には活用できます。
一方、公表日を関連ページから補うか、どこまでを「記載なし」と判断するかには差が出ました。事実関係が重要な大学業務では、Deep Researchを調査の出発点として使い、最後は公式資料の原文を確認する流れが安全です。
なお、本記事は2026年9月29日時点で一般公開されていた資料をもとにしています。各大学の方針や生成AIサービスの機能は更新される可能性があるため、実際の案内や判断では最新情報をご確認ください。
大学におけるAI活用事例をさらに確認したい方は、日本のAI活用先進大学10選も参考にしてください。

